ムトさまが、当サイトのルークとリエナのイラストを描いてくださいました!
Twitterでアップされていた作品です。『旅路の果てに』を読んで、数々の苦難を乗り越えてようやく触れ合えるようになった幸せそうな二人をイメージしてくださったそうです。
もう本当に美しくて、素敵で、溜め息しかありません。
ルークのリエナを見つめる熱く優しい眼差し。ほんのりと頬を染めるリエナの表情。愛おしそうに髪を梳くルークの大きな手と、そっと添えたリエナのちいさな手。
まさに、うちの二人です。心から愛し合う、幸せな姿のルークとリエナをこんなにも素晴らしいイラストで表現していただけて、うれしくてたまりませんでした。
あまりにうれしかったので、お願いしてちいさなお話をつけさせていただきました。
ムトさま、素晴らしい作品を本当にありがとうございました!
********
ルークはリエナの耳元に手を伸ばした。指をかけて紅の頭巾を下ろすと、眩いほどのプラチナブロンドの髪が露わになる。
しばしその美しさに見惚れた後、指を絡めてしなやかな髪をそっと梳く。愛おしげに、何度も何度も繰り返した。
リエナは恥ずかしげに顔を伏せている。透き通るほどに白い肌がほんのりと染まっているのが、よりいっそう彼女の美しさを引き立てていた。
――ようやくこうして触れることができるようになった。
ルークはこれまでを振り返る。
自らのリエナへの想いを自覚して以来ずっと、姿を見るたび、声を聞くたび、触れたくて、抱きしめたくてたまらなかった。けれど、それが許される相手ではないのも理解していた。だから、心の奥底から湧き出る衝動を意志の力で抑え続けてきた。
長い時を経て、それを自ら破る時が訪れた。
互いの想いが同じであるとわかった瞬間、ルークはリエナを抱きしめていた。
――ずっとこうしたかった。
ルークが思わず口にした、言葉。
何度も触れていたはずなのに、それまでとはまったく違っていたことに、ルーク自身も驚いていた。
愛する人に触れる時に『理由』など必要ない。
ただ望むがままに、抱きしめればいい。
やっとそれが、理解できたのだった。
***
リエナは伏し目がちになったまま、じっとルークが髪を梳くに任せていた。無骨だけれど優しい指の動きと同時に、痛いほどに熱の籠った視線を感じている。
リエナはまだルークに触れられることに慣れていない。触れられること自体は、旅の初めから幾度もあったけれど、それにはいつも『理由』があったからだった。
ムーンブルク崩壊の悪夢にうなされれば、抱きしめてなだめられる。
怪我をして歩くことが難しくなれば、横抱きで運ばれる。
そういう時だけは、ルークはまったくためらわない。普段は決して、指一本触れようとしなかったのに。
リエナは触れられる歓びと、何故こんなにも自分に優しくしてくれるのわからないという相反する感情に翻弄され続けてきた。二人は、一度は婚約が内定したものの、ムーンブルク崩壊で白紙に戻ってしまっている。愛し合うことが許されない立場でありながら、リエナに触れる時のルークの振る舞いは、愛する恋人へとしか思えないものだったから。
そう思い悩んだ期間が長かったせいか、こうして触れられても、リエナはまだ歓びとともに、ほんのわずかな不安が拭えないのだ。ようやく互いの想いが通じ合って、やっと『理由』など、必要なくなったというのに。
――この幸せを失いたくない、いつまでも続いてほしい。
そう願うことに罪の意識を感じてしまっているからかもしれない。
リエナはおずおずと手を伸ばした。まだ自分の髪を梳き続けている逞しい腕に、ぎこちなく手を添える。
ルークの指が動きを止めた。不思議に思ったリエナが顔を上げた。視線の先にあるのは力強く、それでいて穏やかな笑み。
リエナはわずかに息をついた。心にわだかまっていた不安がみるみる溶けていく。
これまでにあった、様々な出来事。悲しいこともつらいことも、くじけそうになったことも何度もあった。けれど、それを乗り越えて、今の自分達がいる――。
その事実に気づいた瞬間、リエナはルークに微笑み返していた。
――わたくしは一人じゃない。これからはルークと二人。だから、どんなことが起きても乗り越えていける。
手に手を取って、並んで歩んでいけばいいのだから。いつまでも。
戻る