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旅路の果てに
第7章 2


 無事に村人との顔合わせが終わり、ルークとリエナはジェイクに新しく住むことになる家に案内してもらうことになった。エイミが掃除道具を持って行きたいと言うので、一旦ジェイクの家に戻り、揃って新しい家に向かった。

 案内された家は村の外れにあった。すぐ裏はもう山に近い。それでも日当たりもよく、家の横にはちょっとした畑を作れそうなくらいの空き地がある。やはり丸太小屋で、ちいさいけれどまだ新しいらしく、外から見る限りすぐに住めそうだった。ジェイクは玄関の鍵を開けながら言った。

「どうでえ、この家は。この春まで夫婦もんが二人で住んでたんだ。あんたらと同じで、余所から住みついてくれたんだけどよ、急に故郷に帰ることになって、空家になったんだ。そいつらの使ってたのでよけりゃ、家具はそのまんま残ってるから好きに使ってもらっていい。――さあ、入んな」

 入ってすぐが、こぢんまりとした居間になっていた。石を積んで造られた暖炉がある。ゆったりと大きい、素朴な木の長椅子が置かれていた。その隣に続いて台所。流しにかまどと天火がついている。やはり大振りの食卓と椅子に、食器や食料品をしまっておく戸棚が置いてある。

 居間には二つの扉がある。その片方を開けると寝室だった。これまた大型の寝台が一つと箪笥。隅に戸棚が作りつけてある。その隣の扉を開けると、湯殿である。居間のもう一つの扉の向こうは小部屋になっている。

 これで全部の本当にちいさな家である。広さだけを比べれば、ムーンペタのリエナの寝室どころか、衣裳部屋より狭いくらいである。それでも素朴で、いかにも居心地のよさそうな住まいだった。

 家の中を案内しながら、ジェイクはいろいろと話してくれた。

「ここに住んでたザックってやつがよ、またでかくてな。ルークと変わんねえくらい背が高かった。幅はもっとあったぜ。だから家具が全部でかいんだ。あんたらには、ちょうどいいんじゃねえか? ザックがいた頃は、やつがいろいろと力仕事もしてくれてたんだ。それが急にお袋さんの調子が悪くなって故郷に帰ることになって、ただでさえ少ない男手が減っちまったんで、あんたらが来てくれて助かったよ」

 ルークもリエナも、珍しそうにあちこち見まわしていた。リエナはこのちいさな家が気に入ったらしく、楽しそうだ。

「とても素敵なお家ですわ。本当にここに住まわせていただいてよろしいのですか?」

 掃除道具を抱えたエイミが、笑いながら言った。

「リエナちゃん、本当にお姫様なんだねえ。あたしらにそんな丁寧なしゃべりかたしなくていいよ。でも、ちいさい家だからびっくりしたんじゃない? ご領主様のお屋敷に比べたら、ほんとにちっぽけだもんねえ」

「とんでもありませんわ。とても住み心地がよさそうですもの」

 リエナの言葉に、ルークも同意した。

「俺も居心地のよさそうないい家だと思うぜ? リエナは確かに元はお姫様だが、俺と一緒に野宿も経験してきている。だから、毎晩屋根のあるところで寝られるだけでもありがたい」

 ジェイクとエイミはすぐには何を言われたのかわからなかったらしい。一瞬間が開き、口を揃えて叫んだ。

「野宿!? お貴族様が?」

 ジェイクがあっけにとられた顔をしてルークをまじまじと見た。エイミも信じられないといった顔で、リエナを見つめている。

「俺達はしばらく旅をしてきたって言っただろ? 馬車を使わない徒歩の旅で、宿がないところで夜になったら野宿するしかないからな」

「ええ。でも、ルークはいつも火の番をしてくれていましたの。わたくしだけがゆっくり休ませてもらっていて、申し訳ないと思っていましたわ」

 ごく当たり前のように口を揃える二人に、ジェイクとエイミはあらためて驚かされていた。

 その時、家の外から大きな声で呼ばれた。エイミが玄関を開けると、村の女達が数人、掃除道具や荷物を抱えて立っている。

「エイミ、手伝いに来たよ」

 女達はにぎやかに家に入ってくる。やっと我に返ったエイミは、リエナに向かって言った。

「じゃあ、これからみんなで掃除するからね。しばらく空家だったからちょっと埃はたまってるけど、すぐ綺麗になるよ」

「わたくしもお掃除しますわ」

「それからルーク、掃除が済んだら、とりあえず必要な食料と薪をあげるから、さっきの集会所まで取りにおいで」

「ああ、わかった」

「晩ごはんはうちでいっしょに食べればいいからね。リエナちゃんはあんまり無理するんじゃないよ。ゆっくりここの生活に慣れてけばいいんだからさ」

 そう言うと、早速掃除を始めた。リエナも手伝い始める。リエナは旅の間にほとんどの家事――料理や洗濯、裁縫などは何でもできるようになっていた。けれど、本格的な掃除は初めてである。早速、エイミにモップの使い方を教わっている。

 働き始めた女達を見て、ジェイクが言った。

「じゃあ、俺は家の中を点検するか。しばらく使ってなかったから、どっか修理がいるかもしれねえからな」

 ジェイクはあちこち見回り始めた。ルークも掃除の邪魔になりそうな椅子などを外に出したり、家具を使いやすい場所に移動したりと手伝った。

 大勢の女達の手のおかげで、ちいさな家はあっという間に綺麗になった。

 掃除が終わると、女達は持って来た荷物を次々に広げて見せてくれた。中身は女達特製の様々な保存食に、パンや木の実、季節の果物、香草で作ったらしいお茶に葡萄酒まである。

「これは全部、みなさんのお手製ですか?」

 リエナが女達に尋ねた。

「そうだよ。このジャムも野菜の酢漬けも燻製肉も香草茶も、みーんなそうさ」

「葡萄酒はね、裏山で採れる山葡萄から作ったんだよ。うちの亭主の大好物さ」

 ルークも眼の前に並んだたくさんの食料に驚いている。

「こんなにいろいろと作れるんだ。どれも、うまそうだな」

「ルークはずいぶん食べそうだねえ。今度、リエナちゃんにも作り方を教えてあげるからね」

 ひととおり用事が終わった後も、女達は帰ろうとしない。あらためて、ルークとリエナをしげしげと眺め、久しぶりに見た若い男前だの、まるでお人形みたいな別嬪さんだの、娘ができたみたいでうれしいだの、何言ってんの、あんたなら娘じゃなくて孫の間違いだろだの、にぎやかにしゃべっていた。

 やがて日も傾いてきた。女達もいつまでもおしゃべりに興じているわけにはいかない。それぞれ夕餉の支度のために帰って行った。エイミも今日は張り切ってご馳走をつくると言って、一足先に家に戻り、ルークとリエナはジェイクに連れられて集会所へ薪と他に必要な食料をもらいに行った。

********

 薪と食料を新しい家に運び終わり、ルークとリエナはジェイクの家に戻って来た。

「はい、お帰り」

 エイミが笑顔で出迎える。

「荷物は全部運べたかい?」

「ああ、全部済んだ。ありがとうよ。ところで、食料も薪もあんなにもらってよかったのか?」

「もちろん、いいんだよ。ここはとにかくお恵みが豊富だからね。お礼ならあたしにじゃなくて、ルビス様へ言っとくれ」

 奥からジェイクも出てきて、二人を迎えてくれた。

「おう、戻ったな。早速飯にしよう」

 台所に入ると、料理のいい匂いがする。ルークは食卓に並べられたたくさんの料理にうれしそうな声を上げた。

「うまそうだな。もう腹が減って仕方がないんだ」

「ルーク、たくさん食ってくれ。エイミの料理は天下一品だ」

 早速、四人揃って食卓についた。

 ルークはよほど空腹だったのか、次々と料理を口に運んでいる。その様子に、ジェイクが笑い声をあげた。

「いい食いっぷりじゃねえか。見ていて、すかっとするほどだな。こりゃあ、リエナちゃん、早く料理を覚えないといけねえな」

「あたしでよかったら、いつでも教えてあげるからね」

「はい、ぜひお願いします。どのお料理も本当においしいですわ」

 それまで黙々と食べながら会話を聞いていたルークが、自慢げに言った。

「リエナは料理がうまいんだ」

「へえ、リエナちゃん、料理できるんか。貴族のお姫様だったのに」

 ジェイクが意外そうにリエナを見ている。

「ああ、ここへ来るまでの旅の間、リエナはずっと料理してくれてたんだ。おかげで飢え死にしなくて済んでたぜ」

「ルークはいつもたくさん食べてくれて、とても作りがいがありましたわ」

 エイミも感心したようにルークの食べる様子を見ている。

「確かに、作りがいはありそうだねえ」

「早く、リエナの手料理も食いたい」

「材料をたくさん分けていただいたから、明日から作るわね」

 リエナがにっこり笑って答えた。

「おう、頼むぜ。今から楽しみだ」

 そこへ、冗談めかしたように、ジェイクが問いかけた。

「なんでえ、エイミの料理はまずいってか?」

 ルークが慌てて答える。

「こっちも最高にうまいぜ。ただ、ロチェスの宿には厨房がなかったんだ。リエナの手料理はしばらく食ってなかったからな」

 エイミも笑いながら、お代わりを取りに席を立つ。

「あたしの料理がおいしいって言ってくれて、うれしいよ。さ、どんどん食べてね」

 和気あいあいとした食事は楽しいものだった。食事と後片付けを終えたあと、ルークとリエナは二人の新しい家に帰った。

 長い一日が終わろうとしていた。自分たちの持って来た荷物を片づけるのは明日にして、今日は早めに休むことにする。リエナはずっと楽しそうにしていたが、あれだけ新しい人と会い、動き回れば疲れていないわけがない。交替で湯を使い、寝台に横になると、ルークの腕のなかでリエナはすぐに眠ってしまった。やはり気が張っていて気づかないだけで、相当疲れていたらしい。ルークもリエナの額にやさしくくちづけると、自分も間もなく眠りに落ちた。

********

「ねえ、あんた」

 エイミがジェイクに尋ねた。既に夜は更けている。ジェイクは灯りを消そうとしていたところだったが、そのままエイミの方に向き合った。

「なんだ?」

「ルークとリエナちゃんのことなんだけどね」

「……理由(わけ)有りってのが、気に入らねえか?」

「別にあの二人がお貴族様でも駆け落ちしてきたんでも、それは構わないんだけど」

「お前、まだ追手のことを心配してるのか? それならまず大丈夫だ」

 ジェイクは妙に自信たっぷりに言い切った。

「こっちがしっかり匿って、あいつらも当分村から出なかったら、追手の方も見つけるのは無理だろうよ。ルークは相当用心深いぜ。あいつらがトランに来ることになったのは俺が誘ったからだし、ルークが自分からそれをしゃべるとは思えねえ。だから、他のやつは誰も知らねえはずだ。この話を知ってるのは、きさらぎ亭の夫婦だけだが、ルークと俺の両方から絶対にしゃべるなって、口止めしてある」

 エイミは黙ってジェイクの話を聞いている。

「ルークは俺達には絶対迷惑をかけないとも約束したって言ったこと、覚えてるか?」

「もちろん覚えてるよ」

「ルークからはこう言われてるんだ。すこしでも追手の気配を感じたら自分達は姿を消す。丸一日、村で姿を見かけなかったら家の荷物を処分してくれってっな」

 ジェイクの話に、エイミは溜め息をついた。

「……それだけ覚悟して、駆け落ちしてきたんだねえ」

「ルークの話は信用できると思った。みんなの前でも話した通り、あいつらが悪事を働くとはとても思えねえからな」

「ロチェスで旅人を助けたから?」

「そうだ。魔物をさっさと倒した後によ、助けた旅人はまだ寝こけてたんだから、その気になれば財布や荷物を失敬することだって簡単だ。裸同然で放り出されたって、生命を助けてもらったんだから、文句も言いづらいわな」

「あんたが言うことは、あたしにもよくわかるよ」

 ハーゴンが倒され平和になった今、旅人も増え、それにつれて町でよからぬことを企む輩が増えていることはエイミも知っていた。

「余計な詮索をせずに、トランでルークとリエナちゃんを匿う。これがルークが出した条件だ。それを呑む代わりに、ろくな礼金もなしで用心棒と魔法使いとして働いてもらうんだ。こっちが条件を守ってるうちは大丈夫だ。すくなくとも、前の用心棒みたいなことを言ったりはしねえと思う」

「……あの用心棒には参ったよねえ。いくら魔物退治で怪我をしたからって、あれはないと思ったよ」

「とにかく、あんな腕の立つ男は見たことがねえ。あのでっかい剣を見ただろ? 地味な拵えだが、結構な業物だろうよ。それをいとも軽々と振りまわしてた。リエナちゃんの方だってそうだ。魔法で怪我を治してもらえるなんて、こんなありがたい話はねえよな」

「匿うことはあたしも反対しないよ。あんたが決めたことだからね。でも、どうしても気になってることがあるんだけど」

「気になることって、なんだ?」

「みんなへの紹介が終わったあとにね、二人といろいろと話してて、なーんかおかしいって思うことがあるんだよ」

「おかしなこと?」

「そう。あの二人は駆け落ちしてからしばらく旅してたっていうけど、本当はしばらくじゃなくて、かなり長いんじゃない?」

「うーん、それについては聞いてねえ」

「例えばね、リエナちゃんは料理が上手だってルークが言ってたよね。それもちょっと変じゃない? ご領主様のお姫様なら裁縫や刺繍は習っても、厨房に入るなんてありえないだろうし」

「野宿したとも言ってたな」

「でしょ? あたしらが聞いた以上に、複雑な事情があるんじゃないの? それか、あんたは聞いてるけどあたしやみんなには話してないことがあるとか」

 エイミの指摘は的を射ている。ジェイクはしばらく考え込んだが、やがて口を開いた。

「仕方ねえな。お前だけには話しておく。これからの話は、村のみんなには黙っておいてくれ」

 ジェイクはエイミに、自分がルークと交わした条件を話して聞かせた。

「今日みんなの前で話したあいつらの事情だがな、本当かどうかはわからねえんだ」

「……ってことは、あんたの作り話で、本当は違う理由ってこと?」

 エイミが驚いて問い返した。

「いや、まず話自体は間違いねえ。すくなくとも、駆け落ちは本当だろうよ」

「村のみんなを騙すようなことをするなんて、あんたらしくないよ」

 エイミの口調には非難めいたものが混じるが、ジェイクはきっぱりと言い切った。

「みんなに余計な詮索をさせないためだ。それがルークにここに来てもらう条件だったんだからよ。どうしたって用心棒は必要なんだ、だから仕方ないと思ってる」

 ジェイクはあくまで村のために敢えて危険を冒すことを決めたのである。エイミはそれ以上何も言えなくなった。

「でもよ、ルークが元は騎士様でリエナちゃんがご領主のお姫様ってのは、俺は間違いないと思ってるぜ」

「あたしも駆け落ちはあってると思うよ。……でも何ていうか、もし今日の話が全部本当なら、ルークにとってリエナちゃんはご主人様のお姫様になるじゃない? それならルークはリエナちゃんにもっと遠慮したりすると思うんだけど。それなのに、まるで同じくらいの身分にしか見えないっていうか……」

「言われてみれば、確かにそうかもな」

 ジェイクは意外なほどのエイミの観察力に驚いていた。

「あたしの考え過ぎかもしれないけど、身分違いっていうより、ルークは別のご領主様の跡取り息子かなんかで、それぞれ別の人と結婚させられるのを嫌がって駆け落ちっていう方がしっくりくるんだよね」

「なるほどな。俺はルークの戦い振りから騎士様かと思ったんだがな。荒事に慣れてるっていうか、今まで相当場数を踏んでるぜ。しゃべり方もリエナちゃんと違って、あんまりお貴族様らしくねえしよ」

 話しながら、ジェイクはふとあることを思い出していた。

「――そういや、他にもおかしなことがあった」

「おかしなことって?」

「リエナちゃんの髪だ。俺も二階の小窓から覗いてただけだから、はっきりしねえんだがな、魔物と戦ってる時はまだ、娘の髪型だったはずだ。綺麗な金髪の巻き毛がなびいてたのを見た気がするんだ。――もっとも、ルークの剣さばきにずーっと見惚れてたからよ、絶対じゃねえんだがな」

 ジェイクはゆっくりと記憶をたどりながら、話を続ける。

「で、次の日、ようやく見つけた時にはリエナちゃんは髪を結ってた。だからよ、あの二人、夫婦になったばっかじゃねえかって、そう思ったんだ」

 話を聞き終わり、エイミも頷いた。

「あんたの言うこと、わかる気がするよ。リエナちゃん、白いローブを着てただろ? で、紅色の頭巾みたいなのを頭のとこだけ後ろに垂らしてた。不思議に思ってたんだけど、あれ、髪を下ろしてないとかぶれないからじゃない?」

「お前、よく見てるな」

 ジェイクが感心して唸った。さすがに女だけあって、観察する点が違う。

「でもそれなら、駆け落ちしてすぐってことになる。でも、ルークはしばらく旅を続けてたって言った。それも、野宿に慣れるくらいだから、そう短いはずはねえ」

「考えれば考えるほど、頭がこんがらがってくるねえ」

 エイミが溜め息をつく。ジェイクの方はしばらく無言だったが、頭を掻きながら言った。

「――まあ、俺達がここでいくら考えても、本当のところはわからねえしな」

「そりゃあ、そうだよね」

「とにかく、余計な話は聞かない約束なんでな。村の女達にあれこれ言わせないよう、お前もそこんとこはしっかり頼む。二人の方は、俺がみんなに説明したのと話を合わせてくれることになってるから」

「わかってるよ。あたしもルークとリエナちゃんのことはそっとしておくから。長いこと探してやっと見つけた用心棒なんだし、おまけに魔法使いさんまで一緒だなんて、こんな幸運そうそうないからね」

 エイミも裏山で魔物と遭遇した経験がある。あの時の恐怖は忘れられるものではない。今まで魔物に襲われて傷を負ったり生命を落とした村人がいないのも、単に運がよかっただけである。それでも、逃げる時に足をくじいたりの怪我はあったし、大量の荷物を持って山道を走るのは難しいから、せっかく収穫した恵みをほとんど全部諦めないといけないのも惜しかった。

 エイミは亭主のジェイクが必死の思いで用心棒を探していたことをよく知っている。トランは僻地の村にもかかわらず、村人はかなり豊かな暮らしを送っている。それはすべて、裏山の豊富なルビス様のお恵みのおかげだから、収穫できなければ生活そのものが成り立たなくなってしまう。だから、駆け落ちして追われていようが、ただ同然で用心棒を雇え、おまけに呪文での治療までやってくれるという話にジェイクが飛び付いたのは無理のない話なのだ。

「――このまま揉め事を起こさずにトランに住んでくれたら、こんなありがたいことはないからねえ」

 エイミがしみじみとつぶやいた。




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